雨と

その日も今日みたいな雨が降る日だった。

昨日の夜からずっと静かに降り続けていた雨は
朝を迎えてもやむことがなかったことが
カーテンを開けなくてもなんとなくわかった。

それは前の日の夜、家からすこし離れた場所に通る電車の音が
いつもよりよく聞こえたからだった。

ここ最近は2日雨が降り、
2日晴れるようなこの季節らしい天候だった。

これからどんどん深くなる緑を想像させる
あたたかな毎日のうちのなんてことない1日の始まりだった。

けれど今日は朝を迎えた鳥たちの鳴き声が聞こえなかったことや
昨日の夜の電車の音がわたしをひどく不安な気持ちにさせていて
またひとつ失ってしまったものがあったことに気が付いた。

何回も迎えてきたこの季節なのに、
今年は特別だった。

知っていたことや分かっていたことが
手の中から気付かないうちになくなっていることが
すごくこわい。