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しらない町


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いつものちいさな町の
ちいさな駅に帰ってきた。





駅前は電信柱をなくして
地中に埋めるための工事がずいぶん長い間続いている。





田舎の広い空を細かく刻んでいたそれがなくなるということは
いいことなのか、


地中に埋まったものたちは、
この変化はわたしたちにどんな変化を与えるのか。

















わたしが幼い頃から過ごしてきたこのちいさな町は
ずっと変わらないはずだったのに、



ここ数年で
駅前にはいくつか背の高いマンションが建てられ
駅はきれいに整備された。


近所のショッピングモールの店舗は
何度も入れ替わった。




田舎には似合わない
すこし値段設定の高めのパンケーキ屋も出来た。











けれどバイクで2分も走れば
田んぼばかりの田舎道が続く。



線路沿いのその道をずっとまっすぐ進むと
住宅地があって、そこにわたしは暮らしている。


いくつもの家が密集しているここは
すごく居心地が悪い。









小銭を握りしめて近所のともだちと
自転車に乗って駄菓子屋に行ったことも


夏にはビニールプールで遊んだり
水鉄砲でTシャツをびしょびしょにしたことも


かまくらがつくれるほどの雪が積もったことも
もう忘れてしまった。






気付いたらこの町にわたしを救うものは
ひとつもなくなっていた。
















あとどのぐらい経ったらこの町から
電信柱はなくなるのだろう。


きっとこのこともすぐ忘れて、
田舎の広い空だけが町に残る。


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